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どうして皮膚が透けているカイコがいるのか?ー油蚕変異体についての研究

中島 奈月 (M1)

 カイコを見たことがある方ならご存知かと思いますが、カイコ幼虫の皮膚は白く不透明です。ではなぜカイコ幼虫の皮膚はそのような色をしているのでしょうか?

 答えは、真皮細胞の細胞質に存在する尿酸顆粒と呼ばれる細胞小器官に、結晶化した尿酸を蓄積するためです。この尿酸顆粒が外部からの光を乱反射することで、カイコ幼虫の皮膚は白く不透明に見えるのです(Tamura et al., 1990)。

 これに対し油蚕と呼ばれる変異体では、脂肪体での尿酸の合成、真皮細胞への尿酸の輸送、尿酸顆粒の形成のいずれかの過程に異常があるため、真皮細胞中の尿酸を蓄積した尿酸顆粒が減少または欠損し、皮膚が半透明となります(図1)。

 私は現在、尿酸顆粒の形成に異常のある油蚕について研究しています。

 尿酸顆粒を形成できない油蚕変異体od、oa(Fujii et al., 2010, 2012)、ov(Wang et al., 2013)の原因遺伝子は、細胞内での膜輸送に関与する複合体群のサブユニットのホモログをコードすることが明らかとなっています。

 さらにそれら複合体は、哺乳動物でメラニンを合成するメラノソームや、ショウジョウバエ複眼でオモクローム色素を合成する色素顆粒などの形成過程にも関わることが知られています(Huizing et al., 2008)。そのためカイコにのみ存在する尿酸顆粒も、他の生物のメラノソームや色素顆粒と同じ経路で形成されると考えられています。

 このことを明らかにするために、順遺伝学と逆遺伝学、両方の観点から研究を進めています。

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図1. 正常型(左)と油蚕変異体(右)