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バキュロウイルス由来の長鎖非コードRNAに関する研究

石原 玄基 (D3) (日本学術振興会 特別研究員(DC2))

 昆虫ウイルスの一種であるバキュロウイルスは、自身の増殖を有利に進めるために、脱皮ホルモンであるエクダイソンの不活化 (O’Reilly et al., Science, 1989) や、宿主のウイルス防御として作用するアポトーシスの阻害 (Clem et al., Science, 1991) 、およびウイルスの自然界への拡散に有利となる宿主個体の異常行動の行動の誘起 (Kamita et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2005) といった高度な宿主制御を行うことが知られている。

 このような複雑な制御を行うためには、厳密なウイルス遺伝子の発現制御機構の存在が不可欠であると考えられるが、未だメカニズムは明らかとなっていない。

 私たちの研究室では、その発現制御機構を明らかにするために、カイコ核多角体病ウイルス (Bombyx mori nucleopolyhedrovirus: BmNPV) に感染した培養細胞から作成した完全長cDNAライブラリーを用いたトランスクリプトーム解析を行うことで、ウイルスゲノム由来の転写ユニットを網羅的に同定することに成功した(Katsuma et al., J. Gen. Virol., 2011)。

 詳細な解析の結果、ウイルス感染時にはタンパク質コード遺伝子(ORF)の数をはるかに超える数の転写ユニットが存在し、その中には5個以上のORFを含む非常に長いユニット(約8kb)や、長鎖非コードRNAを含む機能未知の新規の転写ユニットが存在することが明らかとなった。ウイルス由来の長鎖非コードRNAにおける機能解析の報告は殆ど無く、現在は、これらの長鎖非コードRNAがウイルス感染においてどのような機能を持っているのかを解明することを目的として研究を進めている。

 ウイルスゲノム由来の長鎖非コードRNAが、タンパク質をコードするmRNAと同様に1遺伝子としてウイルスの感染・増殖に寄与するのかどうかが明らかにすることで、これまで全く未解明であるウイルスゲノムにおける時空間特異的トランスクリプトームの実現原理が解明されることが期待される。

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